平成26年度札幌円山幼稚園学校評価委員会の審議結果報告
委員長 美濃島茂樹(本園理事・卒業生・学識経験者) 委 員 倉林 志穂 (卒業生保護者、地域住民)
委 員 小尾かおり(保護者、地域住民)
札幌円山幼稚園の平成26年度学校評価委員会は上記3名の委員によって構成された
審議は、平成27年4月26日に札幌円山幼稚園から出された「平成25年度札幌円山幼稚園の学校評価 -本園の教育目標と平成25年度の重点目標-」(以下『学校評価』と記述する)を中心に慎重におこなわれた。この膨大なレポート『学校評価』は、次の「1」「2」二つのアンケートに基づいて作成されている。
- 教職員に向けて、平成26年2月13日に教職員に呈示し、2月16日に集計した「札幌円山幼稚園の教育目標と、平成25年度の重点目標およびその評価項目」(以下「自己評価」と記述する)
- それをふまえて、保護者に向けて、平成27年2月17日に配布し、2月23日を提出期限とした【A-B-C-D】の4段階の選択肢からなるアンケート「札幌円山幼稚園の教育についてのアンケートのお願い」(『保護者アンケート』と記述する)に対する回答と、平成27年3月16日にそれを分析検討し本園の見解を提出した「本園の教育につていのアンケートへのお礼と見解」(以下『見解』と記述する)
- 上記「1」「2」はともにひじょうに詳細な観点にわたる極めて真摯な取り組と言える。そして『学校評価』は、それら二つを比較しながら多岐にわたる項目を設定し分析検討したものであり、本園の幼児教育に対する並々ならぬ熱意と教育実践の取り組みの様子が拝見できるものである。
報告にあたって、始めに審議の結論を述べることにする。札幌円山幼稚園では、この『学校評価』をめぐる検討作業を、自らの教育実践を総点検し対象化する重要な営為として位置づけている。また、その作業過程では、『保護者アンケート』と『自己評価アンケート』を一元化し相互に関連づけながら考察し、次年度の教育計画を立案するために有効に活用しようとしている点で、ひじょうに本質的で構造的な取り組みと言え、当園の真摯な教育への姿勢は高く評価できる。
換言すれば、札幌幼稚園の教育をよりよいものにしようするその姿勢は、文部科学省が自己評価の在り方として提示している「目標(Plan)-実行(Do)ー評価(Check)-改善(Action)というPDCAサイクル」に基づいてしっかり教育実践に関わっていることの証左にほかならない。
また、本園では、保護者の意向に丹念に耳を傾け、教育活動や園運営にそれを活かそうとする姿勢が顕著にみられることが特にすばらしいと思う。
保護者のアンケート回答時に付されたたくさんの肯定的な評価や温かい意見の中から当幼稚園の運営と教育のすばらしさを感謝の気持ちを込めて述べられている感想を引用したい。
「息子を円山幼稚園に入園させて本当に良かったと思っております。
幼稚園を決めるにあたり、どこの幼稚園の先生方よりも歌うときは大きな声で大きな口を動かして歌われ、音楽に合わせて体を動かすときには、指先までしっかりと伸ばし体を大きく使われている円山幼稚園の先生方が最も生き生きとされているのを感じたのが決め手でした。
「たんぽぽくらぶ」でこう感じた時と同様に、年少組でこの1年間に先生方の一生懸命さが伝わってきて、私は幼稚園の行事に参加することが子ども以上に楽しみでした。息子も先生をよく見ているようで、歌う際には口を大きく動かして歌う姿もみられるようになりました。いつも一生懸命で優しさいっぱいの先生方に囲まれて、少しずつですが、息子の成長を感じることができます。
教員の皆様、お身体に無理をされないよう今後ともご指導よろしくお願いいたします。」
そして、以下の<目次>にみられるように、教育方法論や教育社会心理学の理論をふまえて明確な構造をもつ目標を設定し、平成26年度の重点目標の第一として、総合表現活動・自然体験学習園での活動・体育遊びからなる、幼児の発達段階をしっかり踏まえた幼児教育の推進を目指してきた。ここには、幼児教育の本質的であるとともに現代的、独創的な視座が力強く謳われ、その実践では教職員の地道で継続的な努力によって、幼児の多面的な発達に著しい高まりがみられたと評価できる。
目 次
- 札幌円山幼稚園の教育目標
- 【本園教育の大目標】
- 【本園教育の第一の小目標】
- 【本園教育の第二の小目標】
- 【遊びと教育指導との関係】
- 本園教育の9つの特色
- 本園の今年度の重点目標と取組状況(教育活動)
- 総合表現活動による全体的な発達の支援
- 総合表現活動の第一の目的
- 総合表現活動の第二の目的
- 総合表現活動の自己評価
- 自由参観日における総合表現活動発表会の自己評価
- 自然体験学習園での自己実現の促進
- 自然体験学習園での活動目的
- 自然体験学習園での活動の自己評価
- 体育遊びによる体力と運動能力の育成
- 体育遊びの目的
- 体育遊びの評価
- 諸行事による感受性と思考力の増進
- 札幌円山幼稚園の教育目標
大目標として「幼児時代は生涯にわたる人間形成の芽生えの時期として重要なので、幼稚園教育ではそれが豊かに展開できるように、一人ひとりの個性を尊重しながら、発達段階をふまえて総合的に支援する」ことを掲げている。
そして、その下位目標の一つとして、遊びを「幼児はいろいろな遊びを仕事としながら成長する発達段階にあるので、本園では自由遊びはもとより設定保育や諸行事や習慣形成などほとんどの活動を遊びとして位置づける。」こと、つまり遊びを子どもの感受性や思考力や諸能力を、系統的、総合的に成長させるために教育的に再構成して教育実践にあたることを挙げている。
また、下位目標のもう一つとして、そのような教育で培われる内容として具体的に、<はしったり、とんだり、うたったり、おどったり、かいたり、つくったり、かんじとったり、かんがえたり、ことばできもちやおもいをつたえたりする力>、つまり体力・運動能力、感受性、芸術表現力、思考力、豊かな感情表現、思いやり、コミュニケーション能力などを挙げている。
これらをみると大目標とその下位目標との間に有機的な関連性があり理念の実現の道筋が整然としており、実践の計画においても評価においても明確な拠り所となるようになっている。また、教育内容においても、楽しい環境設定や場面設定を工夫し、みんなで楽しみながら遊び、遊びながら人間形成の基礎となる感受性や思考力や諸能力を育むように意図されているので、このような教育では、小学校の教科毎の個別学習では学べない総合的な人間としての力量、つまり人間形成の土台となる諸力をしっかり形成することができると考える。
課題の、若手教員の質的向上のために教職員一同は徹底した研修と研究を怠ってはいないとはいえ、まだまだ努力が足りないと受け止める謙虚さに頭が下がる思いである。
また、生活場面での遊びと教育的な操作を加えて望ましい発達を促す遊びにはかなり大きな差異があるので、後者の点について保護者が納得できる形で見える化を図る工夫が今後必要となるという点では同感である。
- 本園教育の9つの特色
この点に関しては、『学校評価』で明確に説明されているのでここでは割愛する。
- 札幌円山幼稚園の今年度の第1の重点目標と取組状況(教育活動)
- 総合表現活動による全体的な発達の支援
総合表現活動で、わらべ歌遊び・けんけん遊び・和太鼓・和洋の歌曲・早口言葉や落語の小話をはじめ、いろんな芸能や芸術に親しむ。そして、・それらを総合的に組み合わせて、有機的な想像世界を作り出す。これらの活動に好奇心をもって喜んで関わり、豊かな感情を培うと同時に、・歌唱力やリズム感やダンス表現力を育てる。
他方で、この活動を通して、幼児期の発達に欠かせない世界や人間との関わりで必要な総合的な適性や能力を獲得する。とりわけ意欲、好奇心、集中力、感受性、助け合いの心、あいさつなど人間関係のスキル、自己肯定感、人を信じる心などを総合的に育成する。歌や踊りを通して幼児が内側からあふれ出てくる感情やメッセージなどを表現することが重要である。
アンケート結果を見ると、保護者も教職員も、子どもたちは総合表現活動を通して、歌うことがうれしく、体を動かしながらよく歌うようになった、と分析しているが、まだ工夫して深い表現に満ちた歌が歌えるはずだと考えている点ではさらなる展開を期待したい。とは言え、教職員は、すでにかなり高水準の表現教育を実践しているにもかかわらず、まだまだ子どもらしい、人間味のある温かく力強く、深い内側からあふれ出る表現を引き出したいと考えていることに満腔の敬意を表したい。
保護者は、子どもの和太鼓への関心と関わりにひじょうに高い評価をくだしているとはいえ、表現の質いう点からは半数がさらなる向上を期待している。
一方、教職員は子どもの和太鼓への関心と取り組みに保護者よりさらに高い評価を与え、表現の質的な面についても極めて高い水準のものを生み出していると自己評価している。園としては、芸術表現教育の点だけでなく人間教育の点からも総合表現活動の意義は極めて大きいと考え、今後も教職員が一丸となってさらなる努力を重ねていきたいという考え方に賛辞をおくりたい。
- 自然体験学習園での自己実現の促進
- 自然体験学習園での活動目的
自然体験学習園「おひさまひろば」で、畑作、自然観察、野遊び、散歩、歌、踊り、食事などの活動を総合的におこなうことにより人間形成の土台づくりに寄与する。また、自然に親しみ、動植物への興味や関心を高める。さらに、実りの過程に関わり、収穫祭で収穫の喜びを味わい、自然への感謝の気持ちを育て、保護者や友だちとともに楽しい時間を創りあげる。
アンケートの項目は次の5点である。「1」子どもは収穫の喜びを味わうことができた、「2」子どもは野遊びを楽しんだ、「3」子どもは実りの過程を実感することができた、「4」子どもは動植物の自然観察に興味をもった、「5」子どもは自然のなかで歌ったり踊ったりできた。
保護者は、これら「1」「2」「3」「4」「5」のいずれにも高い評価をした。相対的には、動植物などの自然観察に関する指導を質量ともに充実させて欲しいという要望と自然の中で歌ったり踊ったりするのはよいがその場所ややり方により工夫をすべきであるとの批判があった。
一方、教職員も、いずれの点でも高い評価をした。相対的には、実りの過程を実感してもらうという振幅の長い時間を幼児に理解させることは発達段階としては困難を伴うので、実物直感主義による教育方略を考えていく必要があると考察している。
園の運営者には、自然観察に関して保護者と同様な評価をし、この点でのいっそうの検討が必要であると受けとめている。また、「おひさまひろば」の活動は、自然を賛美し慈しむという大切な点を体験を通して実感させるものなので、今後もいっそう力を入れて推進していきたいとの決意を示されている。
- 体育遊びによる体力と運動能力の育成
体育遊びを通して、チャレンジ精神と達成感と有能感を育成する。また、体操・跳び箱・鉄棒・マット運動・ボール投げ・縄跳びなど、運動の基礎能力を習得する。
アンケートの項目は次の3点である。「1」子どもはよく集中していた、「2」子どもは張り切っていた、「3」子どもはよく努力していた。
保護者は、「1」が83%、「2」が85%、「3」が81%、といずれも高い評価が得られ、体力作りと運動能力の習得が幼児時代に重要であるとの認識が強いことがわかった。
教職員は,「1」が56%、「2」が56%、「3」が44%、とあまりよい実践ができなかったと評価している。これは、専任講師の補助として関わり主体的な役割を担えなかったことに対する内省的な表明である。したがって、今後は専任講師と十分な協議をおこない相互のあり方を検討する作業が具体的に進められている。
また、園として、今後は、能力の優劣が意識されすぎることのないよう、不適用な子や発達に遅れをもつ子どもも、互いに励まし合う中でともに成長するような方法論を検討する必要があると考えている。
このように体育遊びに常に向上しようと謙虚で真摯な姿勢で関わる円山幼稚園教職員に満腔の敬意を表した
- 諸行事による感受性と思考力の増進
- お誕生会
お誕生会では、誕生児が園児たちに祝わってもらうと同時に、親子ともどもで成長の喜びを実感し合う機会と位置づけている。歌を歌ったりお祝いの言葉をかけあったりするさまをごらんいただく機会であり、親や仲間の前で言語でしっかり自分のことを表現できるコミュニケーション能力の育ちを実感する節目の機会でもある。
- おひさまひろばの活動
保護者の協力や支援のもと、おひさまひろばでの種まきや種イモの植えつけから始まる一連の活動はお子さまにとって大きな喜びと成長をもたらすものと考えている。
- 収 穫 祭
自然体験学習園での活動の総決算である収穫祭では、作物を採り、じゃがいもを食し、歌や踊りを楽しみ、子どもたちの全面的な成長の機会としている。
- 運 動 会
運動会では、元気いっぱいの子、全力で走り応援する子の姿を見ることができる。お遊戯の水準を超えて、子どもなりに美しさやエネルギーのほとばしりをしっかり表現できるダンスを披露する。このような経験を土台にして、子どもたちは、小学校のダンス授業でも意欲的に表現してくれるものと思う。
- 教育発表会
教育発表会では、子どもたちの感情を豊かに耕すための日常の教育活動の成果を披れきし、保護者の評価を得る。
- 総合表現活動発表会では、子どもたちの感情を豊かに耕すための日常の教育活動の成果を披れきし、保護者の評価を得る。
けんけん大会では、子どもたちの感情を豊かに耕すための日常の教育活動の成果を披れきし、保護者の評価を得る。
- 個人懇談日
個人懇談における担任教師との話し合いを、子どもの成長にとって有益な機会とする。
- 参 観 日
参観日では子どもが成長する様子を多面的に見てもらい、評価を得る。
- 年長組の海外留学生との交流
年長児による数回にわたる海外留学生との交流では、外国人と英語で遊び、外国語への興味と関心を高めるように努める。
保護者が関係する主な園の行事や活動に対する量的評価は次の通りである。
B-4-1~9の園の自己評価と保護者アンケートの結果【肯定的評価】
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保護者 |
教職員 |
1)お誕生会 |
86% |
89% |
2)おひさまひろばの活動 |
87% |
89% |
3)収 穫 祭 |
73% |
100% |
4)運 動 会 |
91% |
89% |
5)教育発表会 |
84% |
78% |
6)総合表現活動発表会 けんけん大会 |
78%
83% |
78%
67% |
7)親子遠足 |
62% |
67% |
8)個人懇談日 |
79% |
67% |
9)参 観 日 |
82% |
89% |
10)海外留学生との交流 [年長児保護者] |
66% |
0% |
教職員が、海外留学生との交流が0%と評価されたのは、年長組担任が中心となっておこなわれている交流が年間を通してよく機能しなかった責任を全員で反省した結果である。そして、今年度はお世話をしていただいている白木先生との打合せ十分におこない目下充実した活動がおこなわれている。
また、相対的に、教職員が課題があると考えているのは、けんけん大会の企画力と指導力の不足、継続性の不足、親子遠足と個人懇談会の企画運営力の不足などについての検討と克服が必要である。とりわけ、個人懇談のありかたが保護者の要望に沿った内容ややり方になっていないように思われるので改善し今年度はおこなっている。
一方、保護者も関わる保育や行事などに対して保護者は、かなり肯定的な評価している。とりわけ、お誕生会とおひさまひろばの活動と運動会と教育発表会と参観日で高い評価がされていて、私ども教職員の労苦が報われてうれしい。収穫祭の交通手段と内容吟味、親子遠足のありかたについては十分に検討し保護者の期待に応えるように努めたい。
園運営者として何よりも大切なのは、園児が喜びを感じる遊びを呈示するための教材研究を日々怠たらず、それらを積みあげ、自然な形で参観や諸行事で保護者に観てもらうように教職員が一丸となって努力したいという趣旨には賛同である。
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